リスクマネジメント協会 Association of Risk Management
リスクマネジメント協会/日本RIMS支部
 








Risk and Insurance Management Society, Inc
IFRIMA

リスクコントロールはなぜ必要なのか

 リスクコントロールとは、損失の発生を事前に防止し、また、仮に損失が発生したとしてもその拡大を押さえて、損失の規模を最小限にするための重要なリスクマネジメント手法として位 置づけられます。リスクコントロールは、テクニカルな観点や損失発生時期を基準に事前・事後といった考え方から、次のような手法に分類することができます。

1.リスクの回避
2. 損失発生の予防・防止
3. 損失の軽減
4. リスクの分散
5.契約によるリスクの移転

 要するに、リスクコントロールは、第一義的には「不確実性によりもたらされる損失の発生を未然に防ぐ」という努力であり、仮に損失が発生した場合であっても「その損失の拡大・増殖をできるだけ押さえようとする努力」であるといえます。 企業は利益を実現するために構成された人の集団であり、事業は人の集団が特定の目的を実現し、利益を得ようとする行為であると意義づけることができます。仮に、損失発生の機会が利益を実現する過程に発生し、拡大・増殖をした場合には、利益実現の機会そのものが失われることになりかねません。リスクコントロールはこうした事態を未然に防止すること、それでも損失が発生した場合にできる限り最小限にその損失を押さえることを目的としています。

リスクコントロールを実現するのは誰か

 企業という人の集団活動の中で、損失発生を防止するのは誰でしょうか。いうまでもなく、その企業を構成する一人一人の構成員こそが、損失発生の機会を防止することができる人たちであるといえます。そして、これらの構成員に対する意識づけ、動機づけを行っていくのが、その集団を率いる指導的立場にある経営陣です。無論、経営陣の中で陣頭指揮を取る立場にある社長こそが企業活動において最終的な責任を負担するわけですから、リスクコントロールを実現する最終責任者も社長であるということができます。仮に、企業内にリスクマネジメント担当の役員を据えた機構づくりをした場合であっても、担当役員の助言に社長が耳を貸さないようであれば、リスクマネジメントを企業内で実現することは不可能なことです。
 しかし一方で、「リスクを恐れていては、企業の成長を実現することができない」という考え方も存在しますが、リスクの存在を組織として認識した上でとる行動とリスクの存在自体を無視した行動とには大きな違いが発生してきます。すなわち、リスクを認識した行動には、企業組織に損失を発生させるような恐れを回避しようという意識が伴うことから、より慎重な行動が期待できることになるといえるでしょう。しかし、リスクを無視する場合には、損失回避に対する意識的な行動を期待することができないため、微細な事象が拡大・増殖し、甚大な損失に結びつく可能性を高めることになりかねません。すなわち、損失発生の可能性を軽視する姿勢を維持するような経営思想に裏づけられた組織には、リスクマネジメント思想そのものが育つ素地が存在しないといえます。したがって、企業組織内において最終的にリスクを制御・管理する責任者は、その組織のトップである社長であるといえるでしょう。社長の指示を受けた担当役員は、実務レベルにおける業務執行の責任者として組織全体でのリスクマネジメントの実現に努め、その結果 を社長を含めた取締役会に報告する義務を負うにすぎないといえるのです。

     
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