リスクマネジメント協会 Association of Risk Management
リスクマネジメント協会/日本RIMS支部
 








Risk and Insurance Management Society, Inc
IFRIMA

コミュニケーションを拒否する組織

 職場での上下関係や社長を含めた取締役間での地位 の上下に対するこだわりといった、自分の考えを自由闊達に発言することができない企業文化の中では、リスクマネジメントを実現することはできません。リスクマネジメントは、企業が自らの意思に基づいて、自社内に存在するかもしれないリスクに自己責任で積極的に対処し、将来にわたる組織としての存続の確保を目的とする経営手法に他なりません。ですから、組織そのものの硬直性や組織内の上下関係・人間関係といった問題は、リスクマネジメントを実現するに際して、障害そのものになる恐れがあります。こうした組織上の問題については、経営側が積極的に取り組む姿勢を示さなければ解決のしようがない問題でもあります。一般 社員に対して、組織上の問題を指摘させようとしても無理があるでしょうし、取締役会で、平取締役に対して組織上の問題を指摘することを求めたとしても積極的な発言を期待することはできないでしょう。一言でいえば、まず最初に、経営トップの姿勢を、勇気を持って変えなければならないのです。
損失が顕在化してからでは遅すぎるかつて日本の企業文化の中には、「失敗を隠す」という極めて特殊な異文化が存在していました。
  しかし、近年、発覚した巨大官僚機構を巡る事件では、依然としてこうした考え方が日本型組織の中には根強く存在していることを明らかになりました。リスクコントロールは、事前に「失敗」という事故の発生を防止する努力そのものでもありますが、仮に、未然に防止できなかった場合であっても、ひとつの「失敗」がさらに拡大・増殖し、巨大機構そのものの存在を揺るがす事態にならないよう、最小限の損失にとどめるための努力でもあるのです。リスクコントロールを忘れた組織がどのような命運をたどるのかを示した典型的な一例でもあるでしょう。
 一方、民間企業の場合には、官僚機構と異なって組織トップの首のすげ替えだけで、事件が終息することはないでしょう。最悪のシナリオは、企業そのものの消滅ということになります。社会的な指弾を加えてくる世論に対してだけでなく、民間企業には企業の所有者である株主が常に存在している可能性があるわけですから、積極的に事態の推移を開示するだけでなく、将来に向けた改善策を提示していかなければなりません。組織の存続をかけた局面 において、リスクコントロールを基本とする経営がその存在価値を発揮できるのかどうかが問われることになります。


リスクコントロールに対する誤解

 リスクコントロールを実施したからといって、損失発生の機会を皆無にすることはできません。なぜなら、「リスクは、不確実性そのものである」と定義をすることができるように、常に人の予測を超えたリスクが存在することを否定できないからです。特に、コンピュータの2000年問題に象徴されるように、昨日までは、疑いもしなかった技術が問題をはらんでいることが顕在化したり、現代社会では急速な技術の発展のもとで、新たなリスクも生み出されているからです。 リスクコントロールは、現在の時点で考えられる限りのリスクを洗い出し、そのリスクに対処しようとする手法です。したがって、新規なリスクや洗い出しから漏れてしまったリスク、気がつかなかったリスクについては、企業が無防備になる可能性を常に持っていることを認識すべきでしょう。

     
Copyright © 2002 - 2008 Association of Risk Management. All Rights Reserved.